抜粋
●序文
シュタイナー学校は、設立から八十年がすぎました。このシュタイナー学校の重要な特徴は、クラス担任の先生が、同じクラスを八年間という長期にわたって担任し、すべての教科の授業をすることです。授業は「エポック授業」というかたちで行なわれ、担任の先生が、二週間、三週間、四週間と、同じテーマを連続して集中的に授業します。エポック授業についてよく知らない人は、毎年新しい教科を何週間もかけて授業するのは、先生にとってとても大変ではないか、そんなことができるのか、クラスの生徒との関係をどう作るか、クラスのなかに大きな障害や依存が生まれ、生徒の自立が損なわれないか、といった疑問を抱くかもしれません。シュタイナー学校のクラス担任の方法については、非常に多くの疑問が生まれることは避けられません。
このような疑問が数多く寄せられるなかで、自由ウァルドルフ学校同盟の教育研究部門の故ゲオルグ・クニーベ氏が、シュタイナー学校での担任の豊富な経験があるヘルムート・エラー氏に、教師生活での体験を通して、シュタイナー学校のクラス担任の仕事についての本を書いてくれるよう相談しました。そうしてこの本ができたのです。この本は、担任の先生の仕事について、まったく新しい豊かな実りをもたらしてくれました。しかも、とても分かりやすい文章で書かれています。この場を借りて、著者に感謝の意を表したいと思います。なぜなら、エラー氏は、クラス担任の長所だけを書くのではなく、先生にとってむずかしい課題も積極的に取り上げてくれたからです。
生徒と先生、先生と親との間には、かならず問題が起きます。この本には、そういった問題が本当に正直に書かれています。そして、この本には、先生の仕事の中でも、いつも自分自身と向き合うことがどれだけ大切かについて、とても大事な内容が書かれています。同時に、それぞれの学年の授業について、学年ごとに、具体的に詳しく書かれており、この本で紹介された内容と豊かなイメージは、親だけでなく、シュタイナー学校の先生になろうと考えている先生たちにとって、とても参考になるでしょう。
ヘルムート・エラー氏は、定年を迎え、担任としてのその実り豊かなすべての経験を回想し、すばらしい本を書いてくれました。このことに、心から感謝の意を示したいと思います。
シュトゥットゥガルト、夏、一九九八年
前自由ヴァルドルフ学校同盟代表 シュテファン・レーバー
著者について
[著者] ヘルムート・エラー(Helmut Eller)
1935年、ハンブルク生まれ。ドルナッハ・シュタイナー教育教員養成ゼミナール卒。ドイツのシュタイナー学校での担任を経て、1988年よりハンブルク・シュタイナー学校教員養成ゼミナールの代表として、シュタイナー教育の普及に力を注ぐ。現在は退職し、世界各国で精力的に講演活動を行なう。専攻は気質学。
[訳者] 鳥山雅代(とりやま まさよ)
1968年、東京生まれ。自由の森学園卒業後、ミュンヘンのオイリュトミー学校で学ぶ。1995年から2002年まで、ニュルンベルクのシュタイナー学校でオイリュトミーを教える。現在は、ニュルンベルクアントロポゾフィー協会、賢治の学校とともに、ニュルンベルクでの日本人を対象としたシュタイナー教育のゼミナールを運営。訳書にマンフレッド・クリューガー著『MEDITATION―芸術としての認識』(東京賢治の学校)。
[解説] 鳥山敏子(とりやま としこ)
1941年香川生まれ。30年にわたって公立学校で教鞭をとり、子どものからだと心に生き生きと働きかける革新的な授業を展開。1994年「賢治の学校」を創立。各地で大人や子どものからだと心の問題に立会い、自分自身を生ききるからだの創造を目指す。2001年4月より、教壇に復帰。新たな総合学習のスタイルが注目される。
著書に『生きる力をからだで学ぶ』(トランスビュー)『賢治の学校』(サンマーク出版)『ブタまるごと一頭食べる』(フレーベル館)『自然を生きる授業』『自然農』共著(晩成書房)『いのちに触れる』(太郎次郎社)『居場所のない子どもたち』(岩波書店)『生まれかわる家族』『親のしごと 教師のしごと』(法蔵館)ほか
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